酢豚探偵のMCT備忘録 新宿区新宿二丁目の巻

1月26日(火) 11時30分頃来店
探検者◎竜超

竜超です。祐天寺まで探検に行くはずだったが直前でポシャッたので、「ここの酢豚はいっとくべきですよ」とマグロ隊員から勧められていた曙橋の「餃子の星」へ単身で行くことに。しかし、来店して聞くと「酢豚は夜だけのメニュー」だという。仕方ないので近隣で良さげな店を探しに。

曙橋界隈はボクが4年強ほど暮らした場所だが、マグロ隊員も住んでいた。「そういやマグロさんがいたマンションの1階が中華屋だったな」と思って向かったのだが、なんと「閉店」の張り紙が。メニューには「酢豚定食」もあったのに残念無念。やはり「そのうち行こう」という甘い考えはダメなんだな、と反省。

そのまま新宿通りを新宿駅方面に進んで行くと、「新宿二丁目」のメインストリートである「仲通り」入口にさしかかった。見れば歩道に中華屋の派手な立て看板が出ていて「酢豚定食 600円」とある。その店は、かつて「限りなく廃墟に近い見た目の老ビル」があった場所に建てられた小ぎれいな雑居ビルの2階らしい。

新宿二丁目と聞くと「イカニモな店しかない」と思っているカタギの人が多いが、最近は「イカニモじゃない店」がどんどん増えているのだ。実際、中華屋が入ってるビルの1階は「すき家」だし、その隣のビルは「辰巳出版」の社屋である。

2階の中華屋は本場出身の方がやっている新興店、トロ隊長の言うところの「チャイナ」だ。なのでスルーしようかとも思ったが「新宿二丁目ど真ん中のチャイナ」というのはそれはそれで面白い。なので、入ってみることに。

まだ11時をいくらか回ったくらいだったので、小ぎれいな店内に客はまばらでゆったりとした雰囲気に包まれていた。お姉さん(二丁目だけどオネエさんじゃないよ)に「酢豚定食」とオーダーしてから、改めてメニューを見ると、ランチメニューが充実していた。一番安いランチは500円で、しかも「食べ放題デザート(杏仁豆腐)」と「食後のコーヒー1杯」付き。うむむむ、すげぇコスパの良さ。町中華が圧倒されるわけだ。

やがて酢豚定食の到着なり。酢豚、麻婆豆腐、白菜の漬物、卵スープと、なかなかの充実ぶり。
麻婆豆腐は「あれ? あんまり辛くないな」と最初に思わせといて、後でジンワリと鈍い辛さが来るタイプ。酢豚の甘さと良いコンビ。
白菜の漬物も柚子が効いててなかなかのもの。
酢豚は、肉のカリッと感はないが、軟らかで味わい深い。こういうの好きな肉族は多いと思うよ。

食べ終わり、セルフサービスのデザートとコーヒーをいただく。デザートはおかわりもしてしまった。う~ん、たった600円で油流しまでできてしまうとは、チャイナ……恐ろしい子……!! 美内すずえの漫画キャラなら黒目が無くなってるところだよ。

油流ししながら思ったのだが、チャイナだって別に寝転がってハナクソほじりながらこのコスパを実現してるわけではあるまい。おそらくは様々な工夫や涙ぐましい経営努力を積み重ねながら、大東京でのし烈な過当競争をしているわけだ。そう考えると、町中華探検と並行して「チャイナ研究」もしてみたい。

町中華探検は「料理の味」よりも「店そのものの味わい」に重きが置かれる活動である。だから極端な話、店さえ面白ければ、たとえ料理自体はズイマーでコスパが悪くてもいいのだ。
対するチャイナは、その正反対。ゆえに両者を比較研究すると、なかなか興味深い結果が導き出されるかも知れない。

とりあえず酢豚探偵としては「酢豚に貴賤なし」をモットーに、町中華・大手チェーン・チャイナ全てを網羅しながら酢豚の調査をしていきますぜ。

ABOUT ME
竜超
1964年、静岡県生まれ。『薔薇族』二代目編集長。1994年よりゲイマガジン各誌に小説を発表。2003年より『月刊Badi』(テラ出版)にてコラムを連載。著書に『オトコに恋するオトコたち』(立東舎)『消える「新宿二丁目」――異端文化の花園の命脈を断つのは誰だ?』、『虹色の貧困――L・G・B・Tサバイバル! レインボーカラーでは塗りつぶせない「飢え」と「渇き」』(共に彩流社)がある。