酢豚探偵の町中華備忘録 杉並区高円寺の巻

2月4日(水) 東京メトロ丸の内線「新高円寺駅」出口前 12時15分集合
探検者/下関マグロ、半澤則吉、目黒雅也、竜超

竜超です。今回は「新入隊員・目黒雅也プレゼンツ」という趣向で、彼の地元である「杉並区高円寺界隈」を探検したよ。

天気も良かったので、例によって自宅からブラブラと高円寺まで散歩。JR駅周辺で古本屋、古着屋、古道具屋などの古い店ばかりをまわって気分がシワシワになったので、「さてそろそろ待ち合わせ場所に向かうか・・・」と思ったら、マグロ隊員から「15分ほど遅れます」とのLINEが。ということで、街ぶらを15分延長す。

12時15分に待ち合わせ場所へ。高円寺は、ボクの行きつけの「ズイマー町中華」(←マズさも「個性のひとつ」として評価できるところが、グルメリポートと町中華探検の大きな違いなのだ)があるディープな町なのだが、今回は寄らず。そうなると、さて、どこにあるのかな?

目黒隊員オススメの「牛乳ラーメン」の店も覗くが、残念ながらこの日は定休日(しかし翌日にテレビ朝日『グッド!モーニング』内でOAされた町中華探検隊特集には登場)。その後、隣駅「南阿佐ヶ谷」に近い杉並区成田界隈(『笑っていいとも!』が始まった当時にタモリが住んでたエリア)まで行くが、結局全員、行きたい店は集合地点付近だったので引き返す。

ボクが選んだのは「中華ことぶき」という裏通りにある店。じつはこの通りは隣駅の「東高円寺」に事務所を借りていた頃、ウンザリするくらい通ったとこなんだけど、この店を意識したことは一度もなかったよ。こういう体験は町中華探検を始めてから幾度となくしてきたが、やはり人間、ボーッと過ごしてると目が節穴になるようだ。

入店し、頼むのは言うまでもなく「酢豚定食」である。「大根とシラタキの煮物」「大根の漬物」「味噌汁」とのセットで1000円。安くはないが、個人店として並程度かな。テーブル席には、この店の「天津麺」が紹介された『週刊朝日』のコラム「魂のラーメン」のカラーコピーが。なるほど、天津麺がウマいのか。でもボクは酢豚だけどね。

酢豚はポピュラーな「甘酢あん」で、味は全体的に薄め。甘味も控えめで、酢の味が全面に出ている感じ。特徴的なのが野菜の切り方だ。使われているのはタマネギ・ニンジン・ピーマンで、1個1個が非常に大きく、ワイルドなり。歯ごたえもある。こうなると問題は「肉の固さ」だ。

酢豚には「硬軟の法則」というのがあって、肉に歯ごたえがある場合の野菜はソフト、肉が柔らかい場合はハード野菜なのがベストなのだ(このあたりの話は、たぶん暖かくなる頃に出るであろう「町中華単行本第一弾」にしっかり書くので買ってね)。恐る恐る(←ちとオーバー)揚げ豚を口に入れると、ソフトでジューシーであった。谷岡ヤスジ調に言うなら「やでうでしや(やれ嬉しや)」だ。

勘定を払って店を出る。町中華のおばさんには「おかみさん」と「奥さん」に大別されるが、こちらは典型的なおかみさんなり。待ち合わせ場所である喫茶「七つ森」で油流し。ハワイに仕事で行ってた半澤隊員からお土産を頂戴す。雑談の中、目黒隊員に隊員の似顔絵を描いてもらうことになる。

シャーベットを頼んだら、レモンと三角ウエハースで「鬼」の顔が作られていた。「節分だからですかね」と言うと、マグロ・半澤が鬼のような眼をしながら「ンなわけあるかい」と。

しかしその後、お店のサービスとして「節分の豆」が出されたので、ぜったいに「鬼」なのだ! だからボクは恵方巻きを買って帰って一気食いをしたのだった。

追伸。探検後、新宿御苑前のミニコミ書店「模索舎」に『薔薇族』の最新号を納品に行ったところ、お店の方が開口一番「どうなんですか、町中華の具合は?」と。じわじわとキテるかもしれません、町中華(ちなみにその人は高円寺のズイマー店を「オイシイ」と。町中華は奥が深いなぁ~)。

ABOUT ME
竜超
1964年、静岡県生まれ。『薔薇族』二代目編集長。1994年よりゲイマガジン各誌に小説を発表。2003年より『月刊Badi』(テラ出版)にてコラムを連載。著書に『オトコに恋するオトコたち』(立東舎)『消える「新宿二丁目」――異端文化の花園の命脈を断つのは誰だ?』、『虹色の貧困――L・G・B・Tサバイバル! レインボーカラーでは塗りつぶせない「飢え」と「渇き」』(共に彩流社)がある。