酢豚探偵の町中華備忘録 豊島区大塚の巻

4月1日(金)JR大塚駅改札前13時集合
探検者/北尾トロ、下関マグロ、あきやまみみこ、田中ひろみ、小倉亜希、竜超

竜超です。今回は先週の王子からもほど近い「大塚」の探検なのである。初参加の女性隊員2名を加え、総勢6名。男女半々なので、事情を知らない人には「中高年のお見合いサークル」と映るかもしれない。

天気も良いし、たいした距離でもないので、春の息吹を感じながら歩いて行くことにする。高田馬場でブックオフを覗いてから目白へ。写真は目白駅付近の線路。菜の花が可憐です。

目白から池袋へ。間もなく取り壊されてしまう「豊島公会堂」の桜をパチリ。

サンシャイン60の足もとを抜け、ほどなく大塚へ到着。ソメイヨシノが満開で「桜まつり」というのをやってました。

大塚駅へ向かう途中、1階のテナント部分に中華屋が何軒も入った都営住宅を発見。「南大塚二丁目アパート」というそうだが、テナントの中には喫茶店もある。この並びだけで「中華実食」から「油流し」まで済ませてしまうので、中華好きの方は入居を検討してみては?

待ち合わせ時間になって駅前へ。大塚駅はJR山手線と共に「都内最後の路面電車」である「都営荒川線」も通っている。JRの構内へ向かう途中、「オジサンねぇ、あんまりウソばっか言ってちゃいけないよ」と言いながら歩く若い警官&70前後の男性とすれ違う。あのオッサンは一体どんなウソばっかついてるんだろうか。気になって仕方ない。

やや遅れてきたトロ隊長が合流し、この日の参加者が全員そろう。なぜか「6人中5人がジージャン着用」で、いつの間にか日本人がジージャン民族になったような錯覚をおぼえる。ま、完全なる錯覚ですけどね。

まずは南口から歩き出す一同。いくつかの店を見るが、うち2軒でトロ隊長が蛇蝎のごとく嫌う「呼び込み」に遭ってしまった。そのつどボクの脳内でキンキンが「ハイ消えた!」とつれないことを言う。

続いて北口へ。こちらには「チャイナストリート」とでも呼ぶのがピッタリな通りがあった。その名の通り、チャイナが大量に軒を連ねているのだ。隣の池袋からこぼれた店があふれてきたのだろうか。池袋の土地勘がある人なら「ロサ会館の一帯が空間移動してきたみたいな眺め」と言えば分ってもらえるだろうか。

チャイナストリートを抜けて、一行はどんどん奥地へと進んで行く。途中、なにやら「すぎる」店と遭遇す。

「やりすぎ」「食べすぎ」とかなら知ってるが、「フルーツすぎ」というのは珍しいね。などと他愛ないことを話しながら住宅街へ突入。そこでトロ隊長は食指を動かされる店を発見し、そこへ入るという。その他の面々はいま来た道を逆行し、気になる店に入っていった。マグロ隊員&女性陣は、トロ隊長のチョイス店に負けないほど個性的な店にするという。残るボクは、チャイナストリートの中にあった「幸福亭」という店へ行くことに。

幸福亭の店頭には定食の看板が出ていて、その中に「黒酢スブタ」なる表記が!

しかも「お勧め」とある。お勧めされてる以上、入ンないわけにはいかないっしょ。というわけで入った幸福亭ですが、こじんまりとした店内は活気にあふれていたのでした。カウンターは無く、2人掛けと4人掛けのテーブルが併せて7つ。席は結構埋まっていて、活気ある店特有の空気感があった。厨房は男性ひとりで回している感じで、ホールの女性がその補助もしているようだった。

お冷のジャスミン茶を飲んでいると、ほどなく黒酢スブタ定食がやって来た。ライス、卵スープ、麻婆豆腐、杏仁豆腐がついて700円。ライスとスープはおかわり自由だそうで、なかなかお得である。

スブタの黒酢餡は「甘ったるい」と感じる手前くらいの甘味でまぁまぁ美味しい。肉もカリッと揚がっていて食べ応えがある。野菜はタマネギ、ニンジン、ピーマンというオーソドックスな構成。適度なシンナリ具合で、肉との相性も良い。

ライスの盛りは良かったが、せっかくだからとおかわりを貰う。やや口が甘くなったのでピリ辛の麻婆豆腐で食べる。う~ん、酢豚のサイドメニューにはやっぱ麻婆豆腐が最強だなぁ。

デザートの杏仁豆腐を平らげて、お勘定。店を出て油流し用の喫茶店を探すが、手頃な店が見当たらない。代わりに、こんなレトロな看板を発見した。

最近めっきり見なくなったよなぁ、「TOBACCO」って表記の煙草屋。てか、煙草屋そのものも激減してるか。

歩いていたらトロ隊長と遭遇。北口では良さげなところがないため、さっき昔ながらの「サテン」をいくつか見かけた南口に戻ることにする。道すがら、トロ隊長の入った店の話を聞くと、まるで朝ドラのヒロインのような半生記が聞けたという。駅前の「ウソばっかついてるオッサン」といい、大塚はなかなか濃い人材の集まるエリアのようだ。

選んだ店は、中華だらけの都営住宅の中にある「えんどう豆」というところ。

惜しくもパフェはなかったので「コーヒーゼリー」550円也を注文。

ここにいることをLINEで知らせると、しばらくしてマグロ隊員一行もやって来た。トロ隊長は、隣に座った初参加の新人ライター・亜希さんに仕事のアドバイス。

言い忘れていたが、この大塚というところはボクにとって思い出深い街なのだ。高2になる前の春休み(1981年3月)、同級生4人で大塚のビジネスホテルに4泊して遊んだのである。普段は「朝来て夜帰る」という日帰りコースばかりだったので、泊りがけでじっくり東京巡りができたこの時はかなり楽しかった。

その時に見かけて記憶に残っていた「ひょうたん島」というパチンコ屋がまだ営業中で、なんか懐かしかったね。4月生まれのボクは春になるとやや感傷的になるのだが、この日も当時を思い出してシンミリしてしまった。しかし直後に「ゲッ、あと3週間でオレ、52じゃんかよ」ということも思い出し、シンミリはゲッソリに変わったのであった。チャンチャン。

ABOUT ME
竜超
1964年、静岡県生まれ。『薔薇族』二代目編集長。1994年よりゲイマガジン各誌に小説を発表。2003年より『月刊Badi』(テラ出版)にてコラムを連載。著書に『オトコに恋するオトコたち』(立東舎)『消える「新宿二丁目」――異端文化の花園の命脈を断つのは誰だ?』、『虹色の貧困――L・G・B・Tサバイバル! レインボーカラーでは塗りつぶせない「飢え」と「渇き」』(共に彩流社)がある。