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東中野「高揚」。昼時の乗り継ぎに東中野に降り立ってみる。商店街を見て回ると「一番」という美味しそうな町中華を見つけるも準備中。14時を過ぎている。他を探すが日曜日のためなかなかやっていない。結局駅周り一周して山手通りから駅へ向かう途中この店に出くわした。正直摑みどころがない外装で入りにくい感じだが客がいるのに勇気づけられる。中に入るとおしゃれでもないがいわゆる町中華の風情ではない。清潔に保たれてはいるが使い古された内装に店主は無口でぶっきらぼうな感じだ。(大丈夫かなあ?)と不安がよぎる。
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外に出してあるランチのご飯は切れてしまっているとのことで「タンメン」(900円)を注文。全体的に普通の町中華に比べると高い。が、意外といっては何だが客足は途絶えない。先客も皆黙々と麺類を食べている。麺類に何か(引き)があるのかしら、第一印象がパッとしなかった場合、客足の多さはそれを一転させ期待に変わる。味がいい可能性がある。ある客が「ラーメン麺固め」というと店主は柔軟に応じている。無愛想と思いきやそういう訳ではないようだ。家系とか九州ラーメンでもないこういう中華屋で(麺固め)指定は無粋だとぼくは思う。柔らかくてもそれもその店の個性として受け入れるべきだ。と余計なことを思った。客が多い割には10分以内にタンメンが出て来た。
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見た目はごく普通よりやや寂しめ。が、スープを一口含む。(やっぱりな)と思う。美味かった。これまで何も好印象なものがなかった荒野に道が開かれる。体に染み入るように優しいスープを邪魔しないギリギリの量の塩分。高級中華の丸鶏スープのような出汁をそのまま飲ませる感じ。麺は手打ち平打ち麺。写真をアップで撮れば伝わるだろうか、ツルツルシコシコタイプ。手打ちらしくたまに極太が混ざる。これを「固め」にしてはもったいない茹で加減。
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つい今まで満席で諦めて帰る客が二組でるほど慌ただしかった店内に静寂が戻る。客は皆素早く食べて店主の手があくのを待ち会計する。せかせかしないゆっくりした時間。静かに麺をすする音が響いている。「ありがとうございました。」と目を合わせずに言う店主。こういう不器用でもラーメンを通してのみ語る店があっていい。穏やかな気持ちになれる味だった。
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(絵と文) 目黒雅也 イラストレーター