酢豚探偵の町中華備忘録 神田神保町の巻

5月11日(水)正午 神田神保町・岩波ホール前集合
参加者/北尾トロ、下関マグロ、半澤則吉、大田洋輔、西谷格、竜超

竜超です。今回の探検エリアは、3度目の神田神保町。かつてはここにある学校に通っていたし、隣接エリアの会社に長いこと勤めていたりもするので勝手知ったるエリアである。それに加えて、こないだの探検からも間がないので、さすがのボクも事前散歩はやめておいた・・・と言いたいのだが、クセってのはホントに恐ろしいもので、つい集合1時間前に現地に着いてしまった。あぁ、こんな早く来てもやることねえよぉ・・・と言いたいのだが、本屋を巡っていたらあっという間に時間が過ぎ、正午になってしまった。マックで期間限定の「甘夏みかんシェイク」も飲んで、そこそこ充実できたなぁ。てへ。

今回の参加予定者は5人。書籍編集者の大田隊員が初参加で、トロ隊長が遅刻である。「先に出発してくれ」とLINEが入ったのでお言葉に甘えて見切り発車。といっても前回と全く同じルートをたどるので退屈ではある。行き帰り同じ道をたどるだけでもストレスがたまるボクにルーティンワークは向かぬ、と改めて実感す。

途中でトロ隊長と合流。ほどなく巡回を終え、どこへ入るかを決める時間に。この日は蒸し暑かったし、途中で見た「冷やし中華始めました」の貼り紙が気になったので、その店「成光」に決定。

マグロさんも成光にするという。店内には小さなカウンターと4人掛けのテーブルがいくつも並んでいる。1時を過ぎてもお客がひっきりなしにやって来る繁盛店で、それをチャキチャキした女将さんがどんどんさばいていく。当然のごとく相席が基本となり、ボクらは初老のオジサンの向かいに座る。

オーダーは2人とも冷やし中華(890円)。どのメニューも時間がかかるようで、向かい側のオジサンも所在なさげに待っていた。やがてオジサンの前にはこの日のサービスランチである「たんめん」が置かれた。しかしボクらのオーダーはまだ当分来そうもないのでヒマつぶしに店内を観察。本棚には町中華推薦図書である「さいとう・たかを」の本がずらっと並んでいたが、なぜかその中に『重版出来!』の第1巻が。小学館のすぐ裏手だから、関係者が置いてったのだろうか。

待っていると、まだグループ探検に参加したことのない西谷隊員から「近くにいるので飛び入りしたい」との連絡が。マグロ隊員が「成光にいるので合流しましょう」と返す。が、現れる気配はなく、冷やし中華も来てしまったので、とりあえず食らうのだ。

成光の冷やし中華は全体的に小ぶりで上品な感じ。キュウリ、トマト、チャーシュー、錦糸卵、紅ショウガなどの具材はオーソドックスだが、ハルサメが載ってるところが面白い。通の人から見ればさほど珍しくないのかも知れないが、ボクは初めて食ったよ。

2016年初の冷やし中華始めを済ませて外へ出ると、西谷隊員が現れた。初めまして、と挨拶をしていると半澤隊員も合流。西谷隊員は入れ違いで成光に入るというので、ボクらは一足先に油流しの場へ。トロ隊長から指定されたのは「サクラホテル神保町」というのに併設された「サクラカフェ」という店である。ボクらが「どこなんだそれは?」状態になっていたら、近所で働いている西谷隊員が場所を教えてくれた。

行ってみると、店前のテラス席でトロ隊長がタバコを吸っていた。店内に入ってドリンクをオーダー。こちらはセルフサービスが基本の店で、そのぶん値段が安い。なんとコーヒーはカップだけ受け取り自分で注ぐのである。ボクは「グァバジュース」のMサイズ(230円)をオーダー。店内で飲んでいたらトロ隊長が「テラス席が空いたのでこっちへ来い」とハンドサインで知らせてきた。で、移動。

ほどなく大田隊員、西谷隊員も合流。テラス席の足もとをフト見れば床がスチールメッシュで、その下には奈落が口を開けていた。

「スイッチひとつで床が抜ける仕掛けかも知れん。店側を怒らせるようなマネだけはするなよ」と半澤隊員にささやいたが無視された。ま、妥当な対応であろう。ボクでもそうするね。

話をする中で、西谷隊員は中国語が堪能であるらしいことが分かった。神保町で中国といえば前回の「中国人と間違われ事件」だが、あの時に彼がいてくれたら、親切に声をかけてくれたオッサンのファンタジーを崩さずぬ済んだのになぁ。

小一時間ほどくっちゃべった後、半澤、大田、西谷は退場。ボクらは残る。じつはこの後、夏に出す「町中華単行本」の巻末に載せる鼎談を収録するのだ。3時半、版元である立東舎(リットーミュージック)に行って録音。こちらはサクッと終わり、神保町駅前で解散。町中華単行本の政策も大詰めとなり、そろそろプロモーションについて考えないとなぁ・・・という感じである。ま、最後まで気は抜くまいぞ。

ABOUT ME
竜超
1964年、静岡県生まれ。『薔薇族』二代目編集長。1994年よりゲイマガジン各誌に小説を発表。2003年より『月刊Badi』(テラ出版)にてコラムを連載。著書に『オトコに恋するオトコたち』(立東舎)『消える「新宿二丁目」――異端文化の花園の命脈を断つのは誰だ?』、『虹色の貧困――L・G・B・Tサバイバル! レインボーカラーでは塗りつぶせない「飢え」と「渇き」』(共に彩流社)がある。