かわかみ@市ヶ谷 by.竜超

今回の探検エリアは「市ヶ谷」である。遠方の方にとっては「防衛省のある辺り」くらいの認識しかないような場所だろうし、近くに住んでいた時期のあるボクですら、「……あそこに町中華なんてあったっけ?」と首をかしげるような感があった。

基本が「出版関係者のサークル」なので、突発的事件などがあると、そっちに行かざるを得なくなる人が出る。今回もそのクチで、例の暴力団抗争の関係でキャンセルする隊員が出た。結局、当日の参加者はトロ、マグロ、竜、そして初参加の女性隊員・岡本まーこの4人となった。でもまぁ、たいていの町中華のテーブル席は4人掛けなので、具合のイイ人数ではあるんだよね。

マグロ隊員のナビゲート(プリントアウトされたルート地図付き)で市ヶ谷界隈を回った。全体的には「町中華ぽくない店構えが多いな」という印象であった。「木造モルタル」みたいなのが一番「らしい」感じで、その次が「古びた雑居ビル」かな。しかし市ヶ谷の店は「でっかいビル内店舗」がほとんどで、ボクが町中華に期待する「ペーソス」とはほど遠い。たぶん古くから営業してきた店が「等価交換」の条件で立ち退いて、跡地に建ったビルに入った……みたいなパターンなんだろうと思う。

周辺を大回りして市ヶ谷駅まで戻り、さらに外堀を渡って大通りへ出る。その間に数軒を見たが、あまり食指が動かなかったり、すでに閉店してたりしてなかなかウマい具合に行かない。最後の一店の前で、「さぁ、どこにする?」ということになったが、わざわざ戻ってまで食べたい店はなかったし、皆の表情から「……ここでいいか」という言葉が読み取れたので、それに従った。

その店、「かわかみ」は、古びたビルの路面店で、町中華のイメージの範疇である。マグロ隊員によると「餃子がなかなかイイ」そうだ。4人掛けテーブルに就いてメニューを見た。餃子はちょっと高めかなと思ったが、「ボリュームがあるのでお得感は高いそうだ。定食メニューの中に「エビチリ定食」があり、わりとリーズナブルだったので、それを頼んだ。他はトロ隊長が「餃子」と「タンメン」、マグロ隊員が「ホンコン飯」、まーこ新隊員が「ホンコンラーメン」といった布陣。……え? なによホンコンて。

雑談をしていると、続々とメニューが揃う。餃子は、なるほど肉厚で食べ応えがある。通常の胃袋の持ち主ならば餃子を食うだけで事足りてしまうかも(ボクには無理だが)。また、エビチリもプリプリ感があって、「エビ食ったぁ~ッ」という充足感がしっかりあった。そして謎のホンコン飯は甘辛味噌で肉野菜を炒めたもので目玉焼きがのっていた。どれもボリュームがあって、まわし食いをしていくと、わりに腹にたまる。それでもぶじに完食じゃ。
0828エビチリ
0828餃子
ホンコン飯@かわかみ

この店は「ランチタイムを過ぎれば喫煙可」だという。それを示す貼り紙を見た時、「お昼時だけは一応女子に気を遣うけどね、ベースはあくまでオッチャン達の店なんだよ」と店が頭を掻きながら訴えている気がして微笑ましかった。やっぱ、ここは勤め人オヤジの領域なんだよね。

トロ隊長の一服が終わるのを待って、一同は店を出た。ボクの胃袋は八割五分埋まっていて、もう後はせいぜい鯛焼き2個くらいしか食えそうもない。まぁ、さすがにイイ歳なんで食いませんでしたけどね。
ABOUT ME
竜超
1964年、静岡県生まれ。『薔薇族』二代目編集長。1994年よりゲイマガジン各誌に小説を発表。2003年より『月刊Badi』(テラ出版)にてコラムを連載。著書に『オトコに恋するオトコたち』(立東舎)『消える「新宿二丁目」――異端文化の花園の命脈を断つのは誰だ?』、『虹色の貧困――L・G・B・Tサバイバル! レインボーカラーでは塗りつぶせない「飢え」と「渇き」』(共に彩流社)がある。