【竜超の肉中華巡礼/番外編】いつまでもあると思うな親と金と町中華

町中華が「風前のともしびジャンル」であるのは紛れもない事実で、だからこそボクらは身銭を切って記録活動を続けているわけである。
実際、このところ各地域でシャッターをおろす店が目立っている。
ボクの地元店である「日の出」の唐突な閉店は多くの常連客の度肝を抜いたが、マグロ隊員の新たにアップした「三好弥閉店」の記事は、常連でも何でもないボクの度肝を抜いた。
マグロ隊員の記事はこちら
その元ネタである竜超の記事はこちら

いやぁ、驚いた。ビックリしたなぁ~もぉ、である。

初めて入った「三好弥」は、近頃は稀有となった「出前パワーみなぎる店」で、「こういう町中華は例外的存在として今後も続いていくに違いない」と心強く思ったものであった。
ホールを仕切る女将さんは気合が入っていて、ひっきりなしに出入りしている出前担当の大将は「ファイトぉー!」「いっぱつぅー!」的なパワフルイメージだったのだ。
店内は清潔で、お客さんも次々に入ってくる。
しかしそれは、今にして思えば「燈滅(とうめつ)せんとして光を増す」、つまり「ロウソクの火は消える寸前にパッと明るさを増す」というやつだったのかもしれない。

ボクが見るに、閉店する町中華には2種類ある。
「老衰タイプ」と「突然死タイプ」だ(フェードアウト型とカットアウト型、と言ってもいい)。
ほとんどの客に「この店はもう長くないだろうなぁ・・・」と思わせながら静かに幕をおろすような店舗が前者で、いきなり閉店(閉店宣言)をしてボクをたまげさせた「日の出」や「三好弥」なんかは後者である。
当然ながら、心の準備ナシでの別離を余儀なくされる分、突然死のほうが客のショックは大きい。

8月19日発売の単行本「町中華とはなんだ」(立東舎)の中でボクは「町中華の9割は『普通においしい店』で、残り1割に『普通じゃなくおいしい店』と『普通じゃなくまずい店』が入っている」ということを書いた。
ボクが「普通じゃなくおいしい店」と認定した町中華は過去に2軒だけあるが、うち1軒はすでに亡い。
残る1軒が静岡県藤枝市の「聚盛」(記事はこちら)であるが、ここも大将の高齢化に伴い、風前のともしび度は高まる一方である。

結局のところ、町中華は「いまにも死にそうな店」であっても「すごく元気そうな店」であっても油断はならない、ということだ。
「いつまでもあると思うな親と金」というフレーズがあるが、ボクはその末尾に「町中華」も加えたいと思う。
あぁ、早く「聚盛」に再来店したい!
次に行ったらもう無かった、みたいなことになってたらどうしよう・・・とか考えると胸がドキドキしてきて、下手すりゃこっちのほうが早死にしそうである。

ABOUT ME
竜超
1964年、静岡県生まれ。『薔薇族』二代目編集長。1994年よりゲイマガジン各誌に小説を発表。2003年より『月刊Badi』(テラ出版)にてコラムを連載。著書に『オトコに恋するオトコたち』(立東舎)『消える「新宿二丁目」――異端文化の花園の命脈を断つのは誰だ?』、『虹色の貧困――L・G・B・Tサバイバル! レインボーカラーでは塗りつぶせない「飢え」と「渇き」』(共に彩流社)がある。