酢豚探偵の町中華備忘録 港区田町の巻

2月26日(金)JR田町駅東口(芝浦口)正午集合
探検者/北尾トロ、下関マグロ、半澤則吉、あきやまみみこ、竜超

竜超です。その日は「2・26」だったが、ボクらは特にクーデターなどは目論まず、いつも通りに町中華探検をしたのであった。今回の探検場所は港区・田町。といっても「田町」という地名はもう存在しないので、「JR田町駅近く」とご理解ください。

たしか田町に足を踏み入れるのは、近くに住んでた友達のところへ遊びに行って以来だが、あれは確か平成のアタマくらいだったような…。イイ古本屋でもあれば足しげく通っていただろうが、そういうものは特にない街なのでねぇ。というわけで土地勘が全然なく、果たして町中華があるのかどうかすらも分からんのよ。しかしマグロ隊員は言う。「田町は中密(中華店密集)地帯なんですよ」と。その自信を信じよう。

マグロ隊員の言葉は嘘ではなく、田町は確かに「中密地帯」なのであった。中華飯店も町中華も多いが、中でもチャイナの数がスゴイ。これはまさに「ビジネスタウンの皮をかむったチャイナタウン」と呼んでも過言ではないかも知れないぞ! …いや、さすがに過言か。

まずは芝浦口(東口)エリアから回りだすが、数軒目に出会ったチャイナが酢豚探偵のレーダーにひっかかった。表の看板には酢豚の中国名のひとつ「糖醋肉(タンツーロゥ)」と記されているが、この名を出している店はあまりないのだ。もうひとつの「咕老肉(グーラォロゥ)」の方ならば割とあるのだが。そんなわけで、どんなブツなのか確かめたくなったのだ。

その後、駅まで戻り、反対側の三田口(西口)エリアを回る。こちらもかなり店が多い。要するに「サラリーマンのランチ需要を見込んだ飲食店」がやたら沢山あるのだ。飲食店が多ければ必然的に中華店だって多くなる。これニッポンの常識なり。

それぞれで行きたい店が異なるので、ばらけて回ることに。ボクはもちろん「第一印象から決めてました!」と、ねるとんチックなことを言いたくなる芝浦口の「糖醋肉の店」だ。解散地点からはかなりの距離があったが、しかし食いたいのではるばる戻るしかない。行きとは別ルートをたどったが、その道すがら、なんとチャイナを4軒も通り過ぎて、改めて「ランチ大国」としての田町の底力を見た気がした。

店までの道は遠く、一番近い店に入った人がたぶん食べ終わったであろう頃にようやく到着した。その店は「四川 dining 錦里(じんり)」という。雑居ビルの2階にあって、まず特筆すべきは「店の内装」だ。コンクリ打ちっ放しっぽい壁面に白いペンキが塗られており、イスは「合皮レザーの白いソファ」。中華屋というより「おしゃれカフェ」みたいなイメージで、なんだか「マガジンハウスの人」にでもなったような気がしましたわよホホホ。

あと、店の活気がすごい。入店はもう13時半過ぎだったのに、後から後から客が入ってくる。この店では「相席」がフツーのようで、みんな当たり前のような顔でアカの他人とテーブルを共有する。ボックスシートに4人で座っているのでグループ客かと思っていたら、食べ終わった2人がさっさと立ち上がり、「あ、別々の2人組同士だったんだ」と初めて気づかされた。ボクも最初は相席だったが、運よくすぐに2人用の小テーブル席が空いたので、そちらに移れた。

席を移ってほどなく、糖醋肉のランチ定食が来た。糖醋肉、卵スープ、千切りキャベツサラダ、大根切干(?)のピリ辛煮物、杏仁豆腐、ライス(お代わり自由)というメンツだ。糖醋肉には「オカズ酢豚」としては珍しくパインがのっている。パインは通常「ごちそう酢豚」のメンバーなので、オカズ系につくのは珍しい。ボクも「初めまして」なのであった。

糖醋肉はミートパワーがたっぷりで、ライスを平らげてもまだ結構お肉サンが残っている。なのでお代わりをもらう。オカズがボリューム満点なので、小ぶりの茶わん2杯しか食べてないのに満腹感がやって来た。ラストの杏仁豆腐まで平らげると、「あぁ~、食ったぁ食ったぁ」という言葉が自然と洩れそうになる。まぁ洩らさなかったけど。

駅まで戻り、油流しに合流。三田口駅前の「サンマルクカフェ」。メニューを見ると「プリンマンゴーパフェ」というのがウマそうだったので、オーダー。600円強なのにボリューム満点で、コスパ良し。…え? さっきの「食ったぁ食ったぁ」は何だったのか、と? そんなことアタイ言いましたっけ。

ABOUT ME
竜超
1964年、静岡県生まれ。『薔薇族』二代目編集長。1994年よりゲイマガジン各誌に小説を発表。2003年より『月刊Badi』(テラ出版)にてコラムを連載。著書に『オトコに恋するオトコたち』(立東舎)『消える「新宿二丁目」――異端文化の花園の命脈を断つのは誰だ?』、『虹色の貧困――L・G・B・Tサバイバル! レインボーカラーでは塗りつぶせない「飢え」と「渇き」』(共に彩流社)がある。