田町や三田にはまったく縁がなく、降りたことは数えるほどしかない。
取材できたことはあるだろうがすべて忘れている。
そういう町はたくさんあるのだが、町中華探検隊を始めてからは
町中華店を探す、食べるという目的があるので
町を歩くし、興味も湧く。
まぁそれはそれで町中華店しか見ていなったりはするんだが。
いやでもね、人は興味のあるものしか見ないからね。
視界に入っているのと見るのとは違う。
5人で歩き始め、10軒近い店を見て回った。
みんなはしゃぎ気味だ。自分もだ。
それぞれ好きな店で食べることになり、ぼくは「大連」を選んだ。
下関マグロから「やっぱりね」と言われた。
竜隊員の酢豚のように、特定の料理を中心に店選びをしている
わけではないのになぜわかったのか。
「大連」だからだろう。
旧満州国にちなむ店名に弱いのである。
ここはビルの上にもでかでかと「大連」と書かれており、
自社ビルだと思われた。かなり古くからやっていると想像できる。
値段は田町相場より少し安めで定食などは盛りだくさん。
卵ラーメンと中華丼のセットを注文。餃子がつくのがいい。
む、スープが薄味。
町中華における薄味店は貴重な部類である。
見渡すと、客の大半が中高年男性で、女性が2名。
濃い味を好みがちな若者の姿は皆無である。
若者にとって「大連」はパンチ不足なのだ。
しかし中高年の域に達したぼくは唸った。
これ、「薄味中華」、いや「優し中華」という新ジャンルではないか。
ずっとこうだったわけではないと思う。
たとえば「大連」が創業60年くらいだとすると、
前半は強めの味つけで攻めたのではないか。
が、次第に常連客が年をとってくる。
なかには「大連」を卒業した客もいるだろう。蕎麦屋あたりに。
近郊にライバル店も増えてきた。
そこで店主は一考するのだ。
「優しい中華を前面に押し出すのはどうか」
差別化というヤツ。
「大連」は愛想がない・
ウエイトレスは中国の人のようで、
ぶっきらぼうこの上なく、居心地はたいして良くない。
が、それはぼくが初入店だからだと思う。
テレビはワイドショーを流し、客は無言でそれを眺めていた。
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