竜超の肉中華巡礼 豊島区・椎名町駅前で「正しい昭和の町中華」を見た!

6月8日(水)西武池袋線「椎名町駅」改札前11:00集合

参加者/増山かおり、きじまりゅうた、小倉亜希、竜超

竜超です。最近は酢豚のある店へなかなか行くことができず「看板に偽りアリ」的状況が続いていたので、JAROに訴えられないうちにタイトルを変えてみたっちょ。
「安くて、大盛りで、肉使いの良いメニュー」に出会うと、一口も食ってないのに「ウマい!」と言ってしまうようなボクにはピッタリでしょ?

今回は、3回目の参加となる小倉隊員の初仕切りで、彼女のホームタウンである「椎名町」界隈を巡ったのであった。
来るはずだった半澤隊員から「無理になりました」と直前に連絡が入り、小倉・増山・竜の3名は残る参加予定者のマグロ隊員を待つことに。しかし定刻から15分過ぎても現れず、連絡もつかないので、とりあえず歩き出した。
が、ほどなくしてマグロ隊員からも「急な仕事が入って行けなくなりました」とLINE連絡が入り、町中華探検隊始まって以来の「トロもマグロも半澤もナシ」というシチュエーションになってしまったよ。あらあら。

以前に隣駅の「東長崎」を探検した際、トキワ荘御用達ラーメン屋の「松葉」の辺りまでを巡ったので、小倉隊員は松葉まで至らないエリア内で厳選したという。
ボクが目を付けた店は、駅前商店街のミニミニアーケード街の中にあった。その名は「銀楽」。ものすごく慎ましやかな店構えで、最初は気づかず通り過ぎてしまった。
「志村ぁ! 後ろぉ! 後ろぉ!」的な感じで「竜さん! 過ぎてるぅ! 過ぎてるぅ!」と叫ばれて、ようやく店の存在に気が付いた次第。

ボクの目を惹いたのは、ショーケース内で燦然と輝く「チャーシウメン500円」というサンプルであった。

これは安いよ。ビックリだよ。週に最低1回の町中華探検を1年以上続けてきたが、ここまで安いのは見たことがない。
「果たしてどのようなブツなのであろうか? ものすっごく低レベルな代物だったりして・・・」
そんな疑問というか好奇心を抱いたボクは、この時点ですでに銀楽行きを決めていたのであった。
それ以外に4店を見て回ったが、「銀楽に行きたい!」という想いは揺るがず、ボクは初志を貫徹。他の2人も各々気になる店へと散った。

銀楽は、昼時とは思えないほど静かな店だった。店内には4人掛けテーブル4つと、3人掛けの小さなカウンター。席に着くや、年配の大将に「チャーシューメンください」とソッコーでオーダー。
正午ちょっと前にボクが入った時にはオジサンが1人。そのオジサンが出た後、入れ替わりに工事現場のガードマンらしきオジサンが入ってきた。カウンターに着いて、オーダーを済ますや、スポーツ新聞を読みだす。
その後、今度は建築関係者らしきニッカポッカのオジサンが来店し、やはりスポーツ新聞に手を伸ばす。
う~ん、客層といい、お客たちの行動といい、まさに「正しい町中華」の姿だなぁ。

メニューは総じてお安め。定食類もバラエティに富んでいて、静かなる充実店かもしれない。

やがて問題の(?)チャーシューメン(チャーシウメン)が来た。うん、確かにチャーシューメンだ。チャーシューは、昨今の「店名Tシャツ系」に慣れた人なら薄いと感じるかも知れないが、ボクの世代ならば「あ、昭和の標準的なチャーシューの厚さだ」と思うことだろう。

「昭和の標準規格」なのはチャーシューの厚みだけではない。その味も、昭和期にさんざん食べたのと同じだった。麺の太さと味、スープの濃さと味も昭和のまんまで、食べていると今日が西暦何年なのかよく分からなくなってくる。
こういう店を、ボクは「タイムスリップ中華」もしくは「ロストワールド中華」と呼んでいるのだ。

「万事において正しいなぁ」と思いつつ、大将と2人で店を切り盛りしている女将さんに500円を払って外へ。
あっという間に平らげたので、まだ他のメンバーは食べ終わっていない模様。なので、近くの「しまむら」で買い物を少々。

駅前のベンチに腰かけていると、食べ終わった小倉隊員、増山隊員が現れる。その後、ぶらぶらと油流し先を探して歩き、「鴻城」という喫茶店に入ることに。
店頭にメニューが一切提示されていないのでシミッタレのボクはやや警戒していたが、そんなに高い店ではなくて一安心。いや、こういう個人店て「コーヒー800円」みたいんなトコがたまにあんのよ。
そこは、郷ひろみの「小さな体験」(1972年 作詞:岩谷時子 作曲:筒美 京平)に出てくるコーヒーショップを彷彿とさせる昭和テイストあふれる店であった。ピンとこない人はネット検索なり何なりとしてくれい。

敬愛する岩谷センセイをどこか彷彿とさせる(たぶん気のせい)マダムに「コーヒーフロート」(480円)をオーダーし、一息つくと、近くに住むきじま隊員から「まだ探検してますか?」とのLINEが入る。「油流し中です」と返信すると「今から行きます」と。

御近所さんだけに、店名を告げただけで見事に現れたきじま隊員。「どこに行ったんですか?」と訊ねる彼に今日の町果(町中華探検の成果)などを語った後、14:00過ぎに解散。
本日は、町中華も喫茶店も「昭和物件が時の流れに干渉されない形で保存されている物件」に出会えて良かった、良かった。

ABOUT ME
竜超
1964年、静岡県生まれ。『薔薇族』二代目編集長。1994年よりゲイマガジン各誌に小説を発表。2003年より『月刊Badi』(テラ出版)にてコラムを連載。著書に『オトコに恋するオトコたち』(立東舎)『消える「新宿二丁目」――異端文化の花園の命脈を断つのは誰だ?』、『虹色の貧困――L・G・B・Tサバイバル! レインボーカラーでは塗りつぶせない「飢え」と「渇き」』(共に彩流社)がある。