竜超の肉中華巡礼 静岡県藤枝市のレジェンド町中華は30年経ってもレジェンド級だった!(オマケつき)

6月10日(金)東海道線「西焼津駅」10:00
参加者/竜超

竜超です。町中華探検隊は「中華者」の集まりだが、中華者は3種族に大別されるのをご存知か。
ひとつは、町中華御三家(ラーメン・餃子・炒飯)に代表される「炭水化物系中華」が大好きな「粉中華一族」。
もうひとつは八宝菜や野菜炒めなどの「野菜系中華」を好む「草中華一族」。
残るはボクのような「肉モノ系中華」にメロメロな「肉中華一族」である。
町中華探検隊は圧倒的に粉中華一族が多いが、世間全般を見れば肉中華一族も決して少なくはないだろう。

肉中華一族としての覚醒をボクにもたらしたのは、郷里の静岡にある「聚盛(じゅせい)」という店だ。国道沿いにある、何の変哲もないロードサイド個人店だが、ここの「味噌チャーシュー麺」がレジェンド級に美味いのである。
最初に行ったのはたぶん14~15歳の時分で、高校を卒業するまでは頻繁に通っていた。といっても家の近所ではなく、隣の隣の市だったので、家族でクルマで出かけた際にしか食べられなかった。

家を出てからは寄る機会が激減し、たぶん20年以上は行っていないと思う。そこの大将はボクが10代の時点ですでに結構なオジサンだったので、もう店はあるまいと勝手に思い込んでいた。
ところが今年の正月、たまたまクルマで前を通り過ぎる機会があったのだが、なんと昔のまんまの状態で存在しているではないの! その時は正月休業中のようで寄れなかったのだが、「よし、今度帰省した際には絶対に行こう!」と心に誓ったのであった。

それから半年、ようやく願いの叶う時が訪れた。ネットで調べたところ、世代交代がなされたわけではなく、昔と同じ大将と女将さんが今でも店に立っているという。ただし、大将の体調に配慮して、営業時間は縮小しているようだ。
しかしメニューは昔のまんまで、レジェンド中華たる「味噌チャーシュー麺」も健在だという。
果たして味も昔のままなのか、食べ比べたい気分がどんどん高まっていった。

訪問当日。大将の元気がある時間帯に行こうと、開店時間の11:00ジャスト到着を目指した。
一応念のため、と最寄駅の「東海道線西焼津駅」に10:00に到着。初めて降りる駅である。

焼津というのは漁港の町だが、市の鳥が「ゆりかもめ」だとは知らなかったよ。

しばらく周囲を散策。地元でチェーン展開するこんな新古書店を覗いて、目ぼしい雑誌類を数冊購入。

こんな清流もあった。

水面に目をやれば、パッと見「UMA」のような姿が! まぁ、単なる「大量の鯉」だが、ただの道沿いの川にこんなにたくさん住み着いてるとはねぇ。

11:00が近づいたので聚盛を目指して歩き出す。西焼津駅からはボクの足で10分くらいか? 途中で市境を超えるので、住所的には「藤枝市」である。

国道沿いを歩いて行くと、あった! 看板が見えてきましたよ~。

おおおぉ、店構えは完全に昔のままだ。

「何もかも皆懐かしい・・・」と沖田十三ぽいことを思いつつ店内へ。
当たり前だがボクがその日の客第一号だ。店内も昭和50年代のまんまで、ひょっとしたら自分も昭和50年代のまんまなんじゃないかと一瞬思ったが、鏡をチラッと見たら、そこには平成28年のオッサンの姿がクッキリと映っていたのであった。
大将を見ると、なんか昔よりも一回り小さくなったような。やはり30ン年の時間は確実に過ぎていた。

カウンターに腰かけ、女将さんに「味噌チャーシュー麺ください」と。しばし待っていると・・・出てきましたよ、レジェンド中華が!

見てちょうだいよ、この大量の分厚いチャーシューを! 肉中華一族なら涙チョチョ切れモンでしょ? いや~、これも昔のまんまだ。嬉しいなぁ。これで850円は激安だよ。
インパクト売りの店名ロゴ入りTシャツ系ならば分厚いチャーシューも珍しくはないが、大将と女将さんだけで切り盛りするちっちゃな町中華で、しかも昭和50年代からこういうのを出してるというのは特筆すべき事柄だよ。

ただ、スープを一口飲んだら、なんか昔ほどとろみや甘味がないような・・・。「うっ、ひょっとして味は変わってしまったか!?」と一瞬不安になったが、食べ進んで行くと、大量のチャーシューの脂が溶け出してスープにとろみと甘みが加わってきた。
そうそう、この味だよ。変わってない。よく考えたら、昔は「まずスープを一口」なんてお上品なことはしてなかったんだっけ。味が違うのも道理。人間、慣れないことぁしねえほうがいいやね。

美味い美味いと食べ進んで行き、あっという間に完食。昔と同様、スープも一滴残さず飲み干す。これが出来る間は、オイラもまだ当分大丈夫な気がする。

ここの味噌チャーシュー麺の素晴らしい点は、ラーメンでありながら、食後の感想が「上等な肉料理を食ったなぁ」となるところである。肉中華一族ならば感涙モンだよ。15歳の当時も52歳の今も、それは全く変わらない。
何はともあれ、思い出の中で燦然と輝くレジェンド中華は、30数年経って再食してもなおレジェンド級だった。この事実に、ボクはいたく感動したのであった。

椎名町の「タカノ」のことを「悪く言うヤツがいたら俺がぶん殴る」と、きじまりゅうた隊員がこないだ鼻息を荒くしていた。彼にとっては子どもの頃から慣れ親しんできた店なので、そういう感情を抱くのは至極当然のことだろう。聚盛とボクもその関係性で、「悪口言いやがるヤツは俺が殺す」くらいの言葉は吐きたくなる。
勘定を払う際、感極まって女将さんに「とっても美味しかったです。昔はよく家族で来てたんですよ」と言ってしまった。こういうことを言うタイプではないんですけどねボクは。

じつは今、東京の自宅そばの老舗町中華「日の出」の経営続行が危ぶまれている。大将の体調不良が原因のようだが、聚盛もまた「いつまで通えるか分からない名店」である。おそらくは大将が力尽きた時点で閉店だろう。
帰省した時にしか寄れないボクの場合、ひょっとしたら「今回が食い納め」となる可能性もある。そう考えると、今回は無理をしてでも出かけておいて良かったなぁ・・・と心から感じましたわ。
静岡在住の方、および静岡に行かれる予定のある方、ぜひ一度お試しあれ。

【おまけ】

食べ終わってもまだ正午前だったので、ぶらぶらと近隣を散策。色んなものがありました。夏の日差しで喉が渇いたので飲み物を買おうと自販機を探したら、こんな駄菓子屋みたいなものが。

その中で、最も意味深な「大人のチョコバット」が気になった(ニヤニヤ)。

なので購入(ニヤニヤ)。

クランキーみたいになってるところが「大人」なんでしょう。たぶん(ニヤニヤ)。

余談ですが、チョコバット買って満足してたら飲み物買うのを忘れました(ニヤニヤ)。

さらに歩いてたら「いなか風中華」という店もありました。ここも気になる。

こちらはすんごいデザートのあるステキな喫茶店。次回は入りたいですな。

この地では、懐かしの赤ポストもいまだ現役でした。

そんではまたニャ~。

ABOUT ME
竜超
1964年、静岡県生まれ。『薔薇族』二代目編集長。1994年よりゲイマガジン各誌に小説を発表。2003年より『月刊Badi』(テラ出版)にてコラムを連載。著書に『オトコに恋するオトコたち』(立東舎)『消える「新宿二丁目」――異端文化の花園の命脈を断つのは誰だ?』、『虹色の貧困――L・G・B・Tサバイバル! レインボーカラーでは塗りつぶせない「飢え」と「渇き」』(共に彩流社)がある。