幸來@稲荷町 チャンポン750円

前回、チャンポンをたのんでいるお客さんを見て、ぜひ次回はチャンポンをたのもうと思っていた。

12時45分、一度、店の前まで行くと、カウンターがいっぱいだったので、出直し。

13時過ぎに再びお店。テーブルに地元のご婦人2名。カウンターに同じく地元民らしき、男性単独客が2名。

オヤジさんは、奥のテーブルに座り、手前のテーブルのご婦人2名と話している。

ここのオヤジさん、僕より10歳上なのだが、たぶん、年恰好としてはこのご婦人たちもおやじさんと同じくらいだろうか。近所の人たちの話で盛り上がっている。まさに土着中華だね。

入ってきた僕にオヤジさんは即座に「どこ行ってきたの?」と聞く。一瞬なんのことかと、思ったら、そうか、僕の格好か。ダウンに毛糸の帽子をかぶっている。近所なので、普段はあまりこんな格好では来ない。
「あ、健康診断ですよ。台東区の。無料なんですから」
と答えた。実際、さっきまで健康診断で、いったん家に帰ったが着替えるのが面倒なので、このままきたのだ。
「健康診断、そんなんだったら、オレがやってやるよ」
とおやじさん。
そんなこと言われてもなぁ。

「チャンポンください」
この日は寒いから僕以外の客もみんな麺を食べている。
チャンポン一丁と奥に注文を通しながら、オヤジさんは話を続ける。
「煙草は吸いなさい、酒は飲みなさい。。。。とかね」
この先、卑猥なことを話そうとしたのかもしれないけれど、ご婦人がいるので、ブレーキを掛けたようだ。
「これが本当の不健康診断」。
まるで、落語だ。
あきさせないね。

ご婦人は会計をし、出ていった。
帰り際に「おじちゃん、またね」と手を振る。

で、やってきました、チャンポン。

黄色い。海老などが見える。いろんなものが入っているかんじ。僕のチャンポン修行の中でも、最初に衝撃を受けた、西荻窪の大宮飯店のチャンポンに似ているかも。かなり卵が多め。
海老、豚肉、白菜、人参、かまぼこなど、いろいろな具材が入っている。

塩味だ。オヤジさんに、
「おいしいですねぇ、でも長崎ちゃんぽんじゃないですね」

「そうそう、あれは、細い揚げ麺にあんかけたやつね、あれとは違うんだよ、うちのは」
と言う。
このチャンポンなるメニューは、幸來さんがオープン時からあるのだそうだ。
誰かから教えてもらったのかと聞くと、オヤジさん、自分で考えたのだそうだ。
「料理なんて、これとこれを合わせればってやれば新しいものができるんだよ。間違って入れたものが意外と合ったりしてね」。

体があったまるメニューというのも大宮飯店さんっぽいね。

また、幸来劇場を見に来たい。

■幸來
台東区北上野2-3-1

ABOUT ME
下関マグロ
下関マグロ(しものせき・まぐろ) 1958年、山口県下関市生まれ。桃山学院大学卒業後、出版社勤務を経てフリーに。北尾トロ、竜超と共著で『町中華とはなんだ 昭和の味を食べに行こう』(角川文庫)。CSテレ朝チャンネル『ぶらぶら町中華』にトロと出演中。