渋谷で鶯谷で仙台や

※都合により写真UPができない状態です。
 可能になったら追加します。

はじめてのMCT参加に心躍らせ、集合時刻1分前にハチ公像前に着くと、竜さんがすでに来られていた。

他の皆さんはビミョーに遅れて来るらしい。
「渋谷に町中華なんてあるんですかね」
「どこなんでしょうね」
ふたりともまったく見当もつかず、あっちではこっちではと言っているうちに、マグロさん、半澤さん、濱津さんが続々ご到着。マグロさんおすすめの「仙台や」を目指すこととなる。

店は鶯谷町という、渋谷駅の埼京線ホーム沿いのあたりにあるとのこと。
このあたりはオフィスとかおしゃれ飯屋が建ち並び、まさかこのあたりに町中華があるとはという印象だった。
だが店が近づいてくるにつれて、そこかしこにかろうじて残る古くて小さな建物や、計画的に作られた感のないゆるやかに蛇行する狭い道に、かつてこのあたりが猥雑な一角であった名残が見て取れる。

そしてついに「仙台や」にたどりつくのだが、なんと竜さんと私はこれを完全に見落とし、数メートルほどオーバーランしてしまった。あれだけ目立つ店構えを見落としているのである。町中華というものは、なんと町並みにとけこむ存在なのだろうか。
まあ我々が不注意なだけかもしれないですが。

店に入って見渡すと、なかなかの広さ。
ただしテーブルはいずれも四人がけで、五人が一度に座れるところはない。
「五人なんですけど」
店員さんが困惑している。
厨房の中のおかみさんに確認してくれたのだが、「えー? ムリ」という率直な言葉が聞こえてくる。
実はこのほかにも、店員がメニューを把握していなかったり、こっちから水差しを持っていかないとおひやの換えを足してくれなかったり、おやじさんが厨房内で堂々とたばこを吸っていたり、なぜか店内で駄菓子が売られていたりとカオティックでファンキーなオペレーション満載の店だったのだが、これはこれでザッツ町中華という感じで悪くない。

隅のテーブルになんとか五人で陣取り、さっそくメニューをチェック。
メニューは豊富なのだが、ところどころによくわからないものがある。
「中華丼」と別に「中国丼」があったり、2000円もする一品料理があったり、「トーフラーメン」なんてのもある。
他の皆さんは定番メニューを頼むようだが、初めて行った店では、看板メニューやオリジナルメニューにチャレンジしたくなるのが私の癖である。トーフラーメンはただの麻婆豆腐ラーメンらしいので、「仙台メン」とやらでいってみることにした。

待っている間、濱津さんが怪訝そうな顔で離れたテーブルを指す。
「器が大きくないですか?」
その席では若い男性ふたりがカレーを食べているのだが、その皿が明らかに常軌を逸したデカさなのである。ソバ打ち用のこね鉢くらいはあるだろうか。
「おいおい……」
一同に緊張が走る……!

しばらくして頼んだ品が続々やってきたのだが……やはり明らかに器がおかしい。デカすぎる。
みな陽性のパニックに陥り、ゲラゲラ笑って競うように写真を撮る。
撮っているうちにもまた大皿料理が届く。店員さんも半笑いだ。
料理がテーブルに収まりきらない。マグロさんがしてやったりという顔で見ている。

「仙台メン」は、野菜とチャーシューのブツ切りがゴロゴロと入った、パワー系の辛い汁メン。
このチャーシューが出色で、見た感じはギュギュッとした歯ごたえを予想させるのだがあにはからんや、これが口の中でホロッと崩れるのだ。これはうまい。
スープは別に激辛というほどではなく、辛いものが苦手な私でもなんとか食べられる程度だ。
ただし、仙台出身の私には、どのへんが仙台要素なのかはわからなかった。仙台にこうしたメン料理があるわけでもない。
聞けばどうやら先代の店主が考案し、店の名前を冠したオリジナルメニューらしい。
その他のメニューもなかなかうまいものぞろい。餃子の餡には干しエビが使われていて、オリジナリティのある味だ。そのまま食べてしまったが、もしかしたらタレをつけたときにタレの味に負けないパンチを持たせたものなのかもしれない。今度は酢醤油で食べてみようと思う。やきそばも酢豚もうまかった。
ただ中国丼だけは、味のベクトルが仙台メンと似ていたために味に飽きてしまい、苦しかったが……。

大食いを期待されて連れてきてもらったので、その期待に応えるべく、残った料理も平らげていく。
あらかた片付いた頃、中国丼の平皿に小さく店の名が記されていることに、半澤さんが気づいた。
「気づかなかったけど、全部に入っているのかな?」
ドンブリについてそれを確かめるには、リッター単位で残っているスープを飲み干すしかない。仙台メンも、濱津さんの味曽バターコーンラーメンも、スープは不透明で底が見えないからだ。
見えないとなれば気になる。そしてそれが可能なのは、この席では私だけ。
意を決して、味曽バターコーンラーメンのドンブリを持ち上げた。
ごくごくごく。
さすがに苦しい。思わず口を離してしまう。
呼吸を整え、二度目のチャレンジ。
次第に底が見えてきた。あと一息!
……残念ながら、底には何も書かれていなかった。まったくもって飲み損である。うっぷ。

仕事にもどらなくてはならないので、恒例の油落としには参加できなかったのだが、ひとり帰る電車の中で、異変が起こった。
突然の倦怠感。そして強烈な喉の渇き。会社に戻ってもそれは収まることはなく、2リットルの水のボトルをあっという間に空けてしまった。
いやな予感がする。
まさかさっきの爆食い、特に最後のスープイッキで、俺は……糖尿病を発病してしまったのではないか!?
これじゃもう町中華めぐりなんてできないじゃないか!

しばらくしたら体調は戻ったたので、単に暑さによる疲労と塩分の取りすぎだったようですテヘペロ☆

  中西庸