王子夜市@王子 桜がまだ咲く前の飛鳥山を抜け、半澤はあの日ダウナーチャイナに行ったんだ

思い起こせば今年は花見ができなかった
4月頭はずっとこもりきりの仕事で会社に出勤
朝と夜、電車から遠目に桜を見るのがやっとだった

そういえばあの日、あの場所でも桜が見れなかった

今思う
あの日、というのは3月25日
あの場所、というのは王子
飛鳥山の桜は残念ながらまだ小さな蕾、来週が盛りですね、という時期で
お花見感は希薄だった

 この日半澤は途中から参加。普段お世話になっている編集Kさんの激奨する「かいらく」に行こうと、心はほぼ決まっていたのだが歩いているうちに迷いが出る。
半澤到着前にMCTが訪れていた「王子夜市」が、どうやら「ずいまー店」だと
やたら話題にあがり気になってしまったのだ。

ずいまーもまた、町中華。とはここのところ議題によくあがる話でもあるし
そんなにいうのならば、いつかは行くだろう名店「かいらく」ではなく
ここはひとつ「王子夜市」勝負もありじゃないか。
ちょっと疲れてておかしなテンションだったというのは多分にあるが
そろそろバレてしまっているように、根がドMなのだろう。
半澤はこの目で見てもいない店へ、一人向かうこととなった。

はいはい、なるほどね。雑居ビルに入っているタイプ。わかるわかる。これは我々のいうところのチャイナ。いわゆる町中華ではないが、チャイナの名店も当然多数あるし。うまくて安い、が信条の店も多い。MCTのメインストリームからは外れてしまうけど、まあ行くっていっちゃったしなあ。たまにはチャイナ攻めもありっしょ。とビルに入っていったが。

単純に日当たりが悪いのか、陽射しの入る向き、角度を想定して窓をつけていないのか
店内は暗かった

14時前、広い店内に客はまばらだった。
1ヶ月半も前のことなのに、われながらよく覚えていると思うが
僕以外に客が3組
もうこの時間から一杯はじめている六十格好のおじさん2人、彼らはしきりに田中角栄がいかに優れた政治家であったかを語っていた。
そして飯を食い終わり、語らっているおばさん2人、彼女らは何かのために時間をつぶしているらしく、朗らかに話していたかと思うと、スマホでゲームなどはじめたらしく無言の時間が長く続いた。口を開いたかと思うと、以後ゲームの話しかしなかった。
もう1組は、こちらも時間をつぶしているのか、食後なかなか席を立とうとしない太ったサラリーマン。僕なんかがいうのは失礼千万だが、くたびれ方が半端なく、もしこれから営業先を回ったりするのであれば、会社の信用落としかねないような重たい雰囲気が大きな背中から漂っていた。

店員はすべて中国人のようで厨房でホールの女の人と料理人が静かな声で話している。どうやら店舗入り口付近におかれたコーラのペットボトルは飲み放題でサラダも食べていい模様だったが、ちゃんとした説明を受けた記憶はない。ランチタイムを経た後にはサラダはほぼ残っておらず、コーラも完全に気が抜けた状態で残念だった。

半澤は麺類が食べたくて定食系ではなく海鮮タンメン700円を注文。

チャイナ店だから味が濃いめかとかまえていたのだけど、けっこう薄味。写真からは伝わりにくくて申し訳ないのだけど、イカが入っていた。たしか。あとエビも。
ずいまー店と聞いていたけど
正直まったくそんなことなく、普通に美味しかった。
これでまずければ、「いやあまずかったっす」とネタにもなったというところだが
あまりにも普通すぎて
リアクションに困った、それでこんなにブログを書くのが遅くなってしまったのだ。

いや、違う
味がどうのこうのではなくて、
店内の雰囲気&客の活気のなさが僕からブログ執筆モチベーションを削いだのだ。
と、人のせいにして申し訳ないのだけど
かなりそう。絶対そう。
この日トロ隊長がおっしゃっていたことが思い出される

「チャイナにも活気があるアッパーなところもあるが、ダウナーな店もあるよね」

それでいうのならば、申し訳ないがこの店は完全にダウナーであった。
もちろん、それは昼下がりのこの時間ということで
夜は安くて美味しく飲める中華酒場として機能するのだろうし
ランチでも混雑しているはず。駅近1分で席も多いから近隣の会社員なんかにはありがたい存在にちがいない。
コーラだって、最初から気が抜けていたわけではなかろう。
それでも、まさにあの日のあの時間帯は、申し訳ないけれど活気もなにもなく
ダウナー中華としかいえない、なんともな空気が場を埋めていた。

諸先輩のリクエストが多く
やっと王子編を書くにいたりました。
遅くなりすいませんでした。

「王子夜市」
 東京都北区岸町1-1-7 3F-B

文/半澤則吉

ABOUT ME
半澤則吉
半澤則吉(はんざわ・のりよし) 1983年、福島県二本松市生まれ。学習院大学卒業後、印刷会社勤務を経てフリーライターに。人・食・物・旅についてあらゆる媒体で執筆する。朝ドラを中心にドラマ記事を書く朝ドラ批評家、ドラマライターでもある。