W暖簾の店「あさひ」(北尾トロ)

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2015年9月15日、総武線平井駅下車15分
「あさひ」
<おもな特徴>中華と蕎麦屋のW暖簾、出前機、中華そばの和風だし

代々木、錦糸町と続いた総武線シリーズ、今回は平井駅に集合した。3回連続で、下関マグロ、竜超、半澤則吉と北尾の男4人なのは沿線の雰囲気と関係があるのだろうか。MCTには何人か女性メンバーもいるのだが、ラインで誘っても行く、行かないの意思表示すらないのだ。
 このところマグロ隊員が歩行距離データを公開しているのだが、毎回4キロ前後歩いている。今回はしのぎやすい天候で、軽い散歩気分で歩けた。代々木のときは暑い上に湿度が高くぐったりしたけど…どうでもいいよ!
 入店したのは「あさひ」。蕎麦屋と中華屋が合体したタイプの店で、マグロによると山形県ではよくあるタイプらしいのだが、紺と赤、2種類の暖簾を並べて下げているのは都内では珍しいだろう。行ったとき、赤い中華暖簾が縮こまっていたので、食事後に許可を取り、MCTの手でグ~ンと伸ばして撮影。糊をきかせているのかピシッとしていて清潔な暖簾だった。

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 いつから商売やってるのと尋ねたら「30年か40年前かしら」とアバウトな返事なのも町中華らしい。普通の店って創業がいつだとか、今年で何年目だとか、いちいち考えないのだ。興味がない。営業は今日も明日も続いていく。毎日いろんな客がきて、細々したことがあるけれど、振り返ってみれば堂々たる平々凡々の日々。それが商売の理想だったりする。
 味や雰囲気については他の隊員がそれぞれレポートしているのでそちらを読んでもらうとして、ぼくが書いておきたいのは出前機についてだ。「あさひ」ではずっと手で運んでいたといい、店内には出前用の盆がたくさんあった。出前機の登場は昭和30年代。それまで、蕎麦屋などでは専任の出前持ちが片手で大量の盆を持ち、自転車を走らせて運んでいた。それを見た外国人観光客が「危険だ」と問題視したのを契機に、それまで目をつぶってた(当時から自転車の片手運転は禁止されていた)警察の指導が入り、数年のうちに全国的に広がっていたそうだ。

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 構造はシンプル。コンビニ袋の上を持つと、左右に揺れても荷物が傾かない原理で横揺れを、3個の空気バネとシャフトで路面の凸凹による縦揺れをクリアし、振動を防ぐ画期的な発明だ。ちなみに東京、札幌のオリンピックでは、予備の聖火を消さずに持ち運ぶため、出前機に乗せて運んでいる。「あさひ」の3輪自転車に搭載されていたのはマルシン出前機の5型(日本そば、一般食堂用。八ッ膳および混合膳にて3段積)だ。

店は厨房2名、ホール1名の布陣だった。ご夫婦とスタッフひとりだと思う(マグロ隊員は、このスタッフは奥さんの妹ではないかと勝手に推測)。ひとりが出前に出ても困らないようになっているのは、出前に力を入れてきた証なのかもしれない。

ABOUT ME
北尾トロ
北尾トロ(きたお・とろ) 1958年、福岡県生まれ。法政大学卒業。裁判傍聴、古書店、狩猟など、体験をベースに執筆するライター。『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』『猟師になりたい!』シリーズなど著書多数。長野県松本市在住。