チャイナから町中華になった稀有な例 萬寿閣@湯島 下関マグロ

今年も確定申告の季節がやってきた。昨年より妻がやってくれている。感謝だ。僕は書類を持って、税務署に行くだけ。というわけで、本日、税務署へ。
マンションの一階まで降りると、下の町中華のおやじさんとバッタリ。きょうは暖かいので表の歩道に出ていた。「どこ行くの?」と言うので
「税務署ですよ。おやじさんのところはどうやってんですか? 個人? 会社?」
「うちわぁ、個人だよ」
「青色申告ですか?」
「そーそー、青色申告会に入ってる」
「もう行ったんですか?」
「まだだけど、すぐにできるから」
「えっ、どういうこと。あ、レジの合計とかそういうので?」
「いやいや、毎日、帳面つけてるから、すぐに計算できるよ。仕入れがいくらとかね」
「へえ、意外だなぁ、ちゃんとやっているんですね」
豪快なかんじのおやじさんが、毎日帳簿を付けているなんてイメージなかったな。
「最初はね、失敗したんだよ、あー、これも経費にできるなってのがたくさんあったけど、最初に失敗しとくのがいいんだよ」
「34年前?」
「そう、34年前。じゃーねー」
そんな立ち話をして別れた。町中華の帳簿、ちょっと見てみたいな。どこかで見せてくれないかな。
上野駅入谷口近くの「ちゃんぷ」へ行こうかと計画。お昼になると混むから、少し前にお店の前。
あれーっ、いつもの白い暖簾が出てないぞ。
テナント募集の貼紙があるじゃない。店を閉めていた。
ショック!
ラーメンはもちろん、スタミナ丼や定食がある昔ながらの町中華だ。ぼやぼやしてると、こうしてどんどん町中華は消えていく。
気を取り直し、「揚子江」へ行こうと思いついた。珍々軒の向かい、高架下にあるお店。
ところが、定休日か、閉まっていた。火曜日定休なんだ。
中央通りに出て、仲町通りを行く。この通りは、入り口にストリップ劇場があって、その先は湯島駅がある。湯島駅からほど近い池之端一丁目に上野税務署はある。
仲通りには中華はけっこうある。
和人餃子房という万番がある「俵堂」さん。
独特なかんじだねぇ。ここも来なくちゃ。こちらはチャイナかな。
「再来宴」って店名がいいね。
出口近くにも「萬華」というチャイナっぽい店。定食が700円か。
さらに、不忍池とは逆へ行くと、こんなチャイナ。
「雅亭」さん。
このまま都道452を湯島駅の入り口を通り過ぎると、
「中華食堂」の文字。
チャイナっぽい店名だけれど、なんだか違う。メニューは町中華だ。このお店、ひょっとしたら、チャイナだったところが町中華になった稀有な例ではないか。看板などは以前のチャイナのままだろう。「萬寿閣」という名前、テントにはその、読みだろうか「WANSHOUGE」とある。ワンショウゲと発音するのか。
メニューの並びなどを見ると、どうにも日式中華のように思える。
チャイナの特徴はとにかく写真でメニューを見せていくし、とにかくメニューが豊富。
それに対してこちらは、文字のみでメニューも少な目。

ジャスト12時に入店。大型のテレビがあって、ちょうど「徹子の部屋」が始まったところだった。
テーブル席のみの変わったレイアウト。

先客は2人。表で工事をやっている警備員のようだ。
一人が麺、もう一人がたぶん、回鍋肉丼とラーメンのセットを食べている。いずれも中年男性。

ランチメニューの最初に書かれている広東麺にしよう。おやじさん1人でやっているようで、少し間を置き、奥から出てきた。「広東麺ください」と注文すると、「はい。お水はそこでお願いします」と言われる。

と、客が次々とやってくる。作業着を着た男性。水をコップに注ぎ、黒板のメニューを見ながら、「広東麺」を注文。奥のテーブル席へ座る。
やはり、広東麺か。
が、次の客はやはり工事現場の警備員で2人よりは年上。慣れた手つきで、お茶を入れて、奥の男性に「生姜焼き」と声をかけ、先客2人の隣のテーブルへ。
と、広東麺がきた。
昔ながらのかんじ。
具材はけっこう種類が多いね。
麺はストレートな中太麵だ。
うまい。
食べログにも載っていない、不思議な店だ。
萬寿閣
〒113-0034 東京都文京区湯島3丁目26−12
というわけで、上野税務署に向かった。

ABOUT ME
下関マグロ
下関マグロ(しものせき・まぐろ) 1958年、山口県下関市生まれ。桃山学院大学卒業後、出版社勤務を経てフリーに。北尾トロ、竜超と共著で『町中華とはなんだ 昭和の味を食べに行こう』(角川文庫)。CSテレ朝チャンネル『ぶらぶら町中華』にトロと出演中。