酢豚探偵の町中華備忘録 目黒区中目黒の巻

3月4日(金)中目黒駅正午集合
探検者/北尾トロ、下関マグロ、あきやまみみこ、momo、竜超

竜超です。今回の探検エリア「中目黒」は、かつては「東横線古本ウォーキング」の起点として愛した街だったが、行きつけの店が次々と倒れていき、いまや「古本不毛タウン」となってしまった。てなわけで、10時ジャストに山手線の「五反田駅」に着き、付近の「ブックオフ」に立ち寄る。ここでは過去あまり良い出物に巡り合えたことがないのだが、この日は「おっ!」とさせられる品が結構あって、80分近くも滞在してしまった。

店を出て、中目黒を目指して歩き出す。この界隈は20代の頃、仕事や遊びで入り浸っていたので、勝手知ったるエリアだ。「恵比寿」のアパートに住んで、「渋谷」「目黒」「五反田」の会社で働いていたのである。五反田で働いていた頃、大雨で目黒川が氾濫し、駅前が水浸しになったことがある。あんときはビックリしたなぁもう。あと、バブル期のあだ花「プールバー」に初めて入ったのも五反田だったっけ。渋谷でも青山でもなく五反田ってトコが泣かせるねぇ。

それにしてもポカポカ陽気だ。目黒川沿いを歩いていると汗ばんできた。途中で一時、半袖シャツ姿になったほどである。遊歩道ではのどかな光景がそこここで見られ、根拠もないのにハッピーな気分になってきた。桜が咲いたらもっと無意味にウキウキしてくるよ。

やがて中目黒駅に到着。待っていたらトロ隊長、マグロ隊員、加入したてで今回が初参加のmomo隊員の順にやって来た。最後に登場したのは今回の仕切り人である、みみこ隊員だ。momo隊員は「私、写真はダメなんです」としきりに言うので「も、もしや福田和子的な人・・・!?」と一瞬、戦慄が走ったが、単に「職場の人に知られたくないから」だという。ボクと同様、「マズイと認識している店にあえて定期的に通い、マズさを確認する癖がある」というので、「それはあなたの魂が男だからです」という賛辞を送っておく。いや、ホントに褒めてんですよ。

今回の舞台である中目黒は90年代前半の、ボクが「フリーランサーと言い張っているプータロー」だった時代、恵比寿からほぼ毎日通って来ていた街だ。「山の分校」みたいなオンボロ図書館があって、金のないボクはそこでの読書を日課としていたのである。けど、当時からあまり町中華の姿は見かけなかった記憶が・・・。

案の定、今回は「三択」になるという。その他にもう一店「ひかり」という店があるそうなのだが見つからず。マグロ隊員が通りかかった人に訊ねてみるも「さぁ、知らないなぁ」と、つれない返事。どうでもいいが、「ひかりを知りませんか?」と訊いていた相手が「頭ツルッツルのおじいさん」だったのは偶然なんだろうか。

中目黒界隈は東横線高架下の再開発のために、飲食店の立ち退き移転が多いのだという(前述の「ひかり」も、後で調べたら高架下にあったらしい)。今回の3つの候補店も、2店が移転組なのだそうだ。うち1店は「高伸」という屋号だったので、もしや「高嶋政伸」もしくは「高橋由伸」が隠れオーナーなのではないか? という疑惑が生じる。まぁ、十中八九「妄想」だろうが。

店の前に佇んでいたらガラッと戸が開いて「いかにも中目黒!」といった感じのオシャレサラリーマンが出てきたので、「見るからに中央線的!」な我々はあわてて退散す。すぐ近くにあるもう1軒の方(こちらも立ち退き移転組らしい)も、なんかカリスマ美容師とかいそうな「裏原宿カットハウス風」のハイカラ店だった。町中華探検隊は上から下までジロジロ見られた挙句に入店拒否に遭いそうな気配だったので、こちらもあきらめる。まぁ、十中八九「被害妄想」だが。

我々が最終的に選んだのは、東横線を横切る大通り(山手通り)をまたぎ、代官山を経て恵比寿まで続く「駒沢通り」沿いにある「宝来」というお店であった。こちらは女性だけで仕切られているお店のようで、厨房を覗けば痩身の女性が力強く中華鍋を振っていた。瞬間、脳裏に「アマゾネス中華」というキャッチフレーズが閃く。

メニュー表に酢豚はあったが、なんと「1900円」という「ご馳走プライスにしても高すぎる値段」なので頼まず。代わりに「モツ煮込み定食」880円をオーダー。ボクはモツ煮も結構好きなのだ。しかし一番好きなのは「牛スジ煮込み」で、暇があった頃には5時間くらいかけて煮込んだりしていたのである。まぁ、十中八九「どうでもいい話」だが。

とりあえず餃子と瓶ビールで味試し。餃子は大ぶりで、ニンニクと野菜の旨味が先に立つ。つまみにはイイ感じ。「餃子リサーチャー」であるみみこ隊員は「水餃子」の定食も頼み、焼きとの対比をしていた。トロ隊長は「高菜そば」、マグロ隊員は「ジャージャー麺」、momo隊員は「ネギそば」をそれぞれ頼みズルズル。

ボクの「モツ煮込み」は土鍋入りのグラグラ状態でやってきた。見たことないけど多分「地獄の釜」というのはこんな感じだろうなぁ・・・と思わせるような見た目で、何の罪で入れられたかは不明だが、モツと豆腐が煮られてヒーヒー言っていた。この定食はライスが美味しい。店頭の張り紙に「魚沼産コシヒカリ使用」とあったが、なるほど納得の美味である。

店を出て、仕事に戻るmomo隊員と別れ、残る4人で中目黒駅前の「サイゼリア」へ。当初は皆ドリンクバーのみ頼むつもりだったが、「デザートとのセットオーダーの方がお得ですよ」と教えると、「おぉ、それはいい!」とオーダー変更。嗚呼、良いことをすると気分がいい。例のごとく「身になる部分が一切ないくっだらない話」をしながら「イヒヒヒヒ」と談笑。自分らが「世界最高峰のしょうもない中高年」であることを再確認しながら、今日の探検の幕を下ろしたのであった。

ABOUT ME
竜超
1964年、静岡県生まれ。『薔薇族』二代目編集長。1994年よりゲイマガジン各誌に小説を発表。2003年より『月刊Badi』(テラ出版)にてコラムを連載。著書に『オトコに恋するオトコたち』(立東舎)『消える「新宿二丁目」――異端文化の花園の命脈を断つのは誰だ?』、『虹色の貧困――L・G・B・Tサバイバル! レインボーカラーでは塗りつぶせない「飢え」と「渇き」』(共に彩流社)がある。