正月気分から抜け切れず始まった剣道部活動指導(目黒は本業のイラストレーターと剣道講師をしています)。学校はまだ冬休みで午前の稽古を終え自転車で帰路につく。今回初めて参加する「町中華探検隊」の趣旨に合うであろう中華料理店はこの通り道にも数軒あり、だいたい味見済みだ。今回は杉並区堀ノ内にある「西國飯店」。
ルックスはまさに「町中華」。「中華」の黄色い立て看板のネオンはとうに点かなくなり、上部にある「中華の店」という(中華繰り返し)がいい。
「冷やし坦坦つけ麺」。いずれ冒険してみたいメニュー。大量の唐辛子とにんにくが置かれている。
堀之内は最寄り駅の東高円寺からでも徒歩20分かかる陸の孤島である。ここには「妙法寺」というお寺がある。詳しくは(やくよけ祖師 本山 堀ノ内妙法寺)とあり(やくよけ祖師)というのは日蓮が鎌倉から流刑に処せられた際に流木から像を掘り祈念すると3年後に帰還したというその像が祀られているということらしい。
付近は小規模な商店街で唯一の中華料理店がこの「西國飯店」ということになる。昼時には店内が作業着姿の労働者、あるいは近所の家族、お寺に来た客などで賑わう。土日は道なりに縁日となり漬物や佃煮が売られる。寺の隣には「揚げ饅頭」を扱う店が二軒ある。比較的高齢者が多い町でしょっちゅう老人同士がぶつかりそうになっている。ぼくは町中華ではラーメンの味をまずは知りたいのだが今日は肉ニララーメン(800円)を注文。入店して数分で周りの客が入れ替わり、厨房ではおやじさん、おかみさん特におかみさんがジャイアンママのように恰幅のよい頼もしい体軀で悠然と中華鍋を振り、おやじさんは一歩引いて麺茹でや盛り付けをしている。娘さんらしい中年女性がホール担当だが出前の話を取り継ぐたびにおやじさんは煽られて多少かりかりしている。その間もおかみさんは微笑みさえ浮かべて透明ガラスの向こう側で鍋を煽りつづける。ふと見渡すと皆焼餃子を注文している。メニューは備え付けとは別に手書きで(ワンタン 水餃子 焼餃子 各450円)とある。慌てて餃子を追加、しかし、なんとぼくの後から来て注文した客の分で売り切れ。よく見れば丸々と太った大きめタイプではないか。こういう(注文のモタつき)が命運を分ける。
そこに肉ニララーメン登場。炒めものガッツリ乗せではないが立派なおかずラーメンである。ぼくはラーメンの味を侵食し過ぎない乗せものが好きだ。が口に入れてびっくりただの肉ニラではなく生ニンニクおろしガッツリ混ぜではないか。やばかった。午後の部活でなくて良かった。麺は柔らかめ、すこし太め卵麺。スープは鶏がらのみではなく豚骨も少し効いているかな。脂はあっさりだが肉の出汁のうまみがしっかりしたいいスープだ。帰りは餃子の腹いせに通り道にある個人八百屋スーパーの「コマノヤ」の揚げ餃子(5つ100円)を買う。昼過ぎに帰宅、さて今日は個人注文の鑑賞用イラストレーションを描く。しばらく人には会えないニンニク口だから丁度いい。
野菜多めの意外とうまい「コマノヤ」手製揚げ餃子。
店内スケッチ。
(絵と文)目黒雅也 イラストレーター