ありあけ@押上 by.竜超

2015年7月16日(木)、本日の探検エリアは東京スカイツリーのお膝元である「押上」だ。スカイツリーに来たことがないボクにとって押上は、当然のごとく未踏の地である。それにしても暑い……。前の日まではまだ穏やかな初夏の陽気だったはずなのに、よりにもよって探検当日に真夏へと切り変わった感じだ。スカイツリーの足もとに着く頃にはもう汗だくでさ、「こんな日は中華じゃなくてソフトクリームかなんかをいただきたいもんだやんすね」と心から思ったもんさね。

おなじ地下鉄に乗り合わせた半澤隊員(←たまたま乗った車両にすでに乗っていた)と共に、待ち合わせ場所に着くと、すでに北尾隊長と下関隊員が待っていた。今回はこの4人だけの少数精鋭体制である。一同はスカイツリーには目もくれず、その傍らをずんずんと進んでいく。

目的地が押上に決まったのは、「3つの町中華が向かい合ったトライアングル地帯がある」という情報を下関隊員がもたらしてくれたからだ。スカイツリーから2~3分という至近距離に、そのトライアングル地帯はあった。見れば、確かに3軒の町中華が正三角形に近い位置関係で営業していた。「復興軒」「ありあけ」「甘太樓」の3店である。

今回は、3組に分かれて全ての店を探検するという趣向なので、誰がどの店を担当するのか決めることに。ボクは定食担当ということなので、定食メニューのいちばん多そうな「ありあけ」を志願した。北尾隊長&半澤隊員は「甘太樓」、下関隊員は「復興軒」に決まった。食後に落ち合うカフェを決めて、いざ担当店へGO!
ありあけ
正午すぎだから混んでるかな~、と少しドキドキしながらドアを開けると、予想に反して店内に客は3組ほど。拍子抜けしたボクは手近なカウンター席に座り、メニューを見た。定食はいくつかあったが、いちばん中華っぽいものを、ということで「ギョウザ定食」750円也を注文した。ちょっと耳が遠いらしいホールのおばあちゃんが何度か聞き返してくるところが、なんとも個人店ぽい感じである。
メニュー店員は、前述のおばあちゃんと、その息子っぽい風情のおじちゃん(厨房担当)の2人のみ。どちらかが寝込みでもしたら休業するしかないのかなぁ・・・・・・とか考えたら、なんだかちょっと切なくなってきた。うん、これはなかなか町中華的情緒があってイイねえ。

で、注文したギョウザ定食であるが、味も量も、良くも悪くも「フツー」であった。要するにボクは「スカイツリーくんだりまで手間ヒマかけてフツーのギョウザ定食を食いに来た」わけだが、しかしそれに疑問を抱くのはヤボというものだ。こないだから気づき始めたことなのだが、たぶん町中華に「味」を求めてはいけないのである。そこで味わうべきは「いつ消えてしまうかわからないというハラハラ感」なのだ。そういった意味で、今回の探検は意義があるのだろう。
餃子
店を出て、落ち合う約束のカフェに行く……その前に、ちょっと寄り道。スカイツリーから三角地帯に向かう途中で目についた古本屋をチェックするのである。私鉄沿線とかによくあるタイプの個人点であるが、棚の中に下関隊員の著書『下関マグロのおフェチでいこう』を発見! 店を出たらちょうどご当人がいたのでその旨を伝えると、手に入りにくくなった本なので買っていくとのこと。役に立てて良かった。
古本屋その後、カフェで脂流しをしながら各店の報告を。聞けば他の隊員たちは、その店ならではの独創性あふれるメニューを味わってきたのだという。う~ん、ボクはどうにも「うンま~い!」方面の運はないようだ。こうなったら、もういっそ割り切って「美味を求めない町中華探検家」を名乗ろうか。うん、それもそれで面白いかもね。
ABOUT ME
竜超
1964年、静岡県生まれ。『薔薇族』二代目編集長。1994年よりゲイマガジン各誌に小説を発表。2003年より『月刊Badi』(テラ出版)にてコラムを連載。著書に『オトコに恋するオトコたち』(立東舎)『消える「新宿二丁目」――異端文化の花園の命脈を断つのは誰だ?』、『虹色の貧困――L・G・B・Tサバイバル! レインボーカラーでは塗りつぶせない「飢え」と「渇き」』(共に彩流社)がある。